酔った次の日は、いつもより頭がクリアで気持ちがリセットできる気がするから不思議だ。
もちろん、ただの勘違いで、健康的に過ごしている日が健康なのは間違いない。
その日訪れたのは、浜松町にあるカディスバー。
バーテンダーは1人で、銀座のかの有名なバーにいた方。
このバーを知ったきっかけは、一冊のカクテルレシピ本。
ここに、M30-レインという上田氏オリジナルカクテルが紹介されている。
ブルーキュラソーとグレープフルーツのリキュールによる、雨を思わせる、なんとも絶妙な淡い青色のショートカクテル。
(ウォッカ4/6、パンペルムーゼ1/6、ライムジュース1/6、ブルーキュラソー1/2tsp)
好きなカクテルはいろいろあるが、色でいうと、青い色のカクテルが好きだ。
スカイダイビング、ブルーマンデー。
この、M30-レインは上田氏のいるテンダーにいけば出してくれるだろう。
ただ、テンダーはどうしてもいい意味で緊張感がある。
カディスバーのマスターは、
「バーはある程度は緊張感があるものですよ。それがいいんですよ。」
と言っていた。
確かに、バーのもつ緊張感は必要だ。
扉の前に立ち、開ける、その瞬間。
ただ、その緊張感は、お酒と会話で徐々にほぐされ、グラスの氷が溶けるように、こちらの気持ちもゆっくりほぐれていく。
その緩急が心地よいのではないかとも思う。
このカディスバーを知ったのは、M30-レインについて調べていたときのこと。
上田氏のもとで働いていたバーテンダーが浜松町でバーをやっているという。そこでM30-レインをオーダーしてみた、という情報があったので、伺ってみることにしたのだ。
その日の仕事終わり、浜松町近くのラーメン屋で軽い食事をしてから伺った。
駅から5分くらい。地図を見ながら行くも、浜松町に詳しくないので、少し迷ってしまう。
店の前に来ても、ここにこんなバーがあるとは知らないとわかりにくい。
バーというものは、概ねそんな感じの佇まいだ。
階段をゆっくりと降り、扉を開ける。
「どうぞ。いらっしゃいませ」
こう声をかけてもらえるのを少し待つ。
先客は3人で、いずれも1人で飲んでいたが、うち1人は待ち合わせのようで、そこをあけて間に入れていただいた。
テーブル席もあるが、やはりバーはカウンターだ。
このお店は席と席がやや近い。秘密の話をするには向かない。
マスターはこちらが話しかけるか、話したそうにしていない限りは下手に話かけてきませんので、一人の時間を過ごしたいときも大丈夫。
客のだれかが話しかけると、話をしますが、誰か1人とずっと話をすることはない。
その日は、「M30-レイン」をオーダーしたい気持ちを抑えて、ジントニックを1杯目にお願いした。
流れるようにさっと作って提供される。おいしい。
2杯目に、決めていた「M30-レイン」をオーダー。
「よく知ってますね」と言われました。
このカクテルは、レシピはどこにでもあるんですが、色合いと味が難しい、とも。
メジャーはあるものの、カクテルの多くを目分量で作ってます。
それでもカクテルグラスぴったりの量、そして味はばっちし。
写真も確認をとって撮らせてもらいました。
「僕は撮らないでくださいね。事務所がうるさいので」と笑いも欠かしません。
その後もう1杯、マンハッタンをいただきながら、銀座のバーについて会話をしあとにしました。
銀座ではなく、バーがないこの地を選んだとのこと。
浜松町に来ることがあれば、この周辺でおそらく唯一だろうとこのバーにまた訪れたい。